ホラー映画における定番の演出の理由

ホラー映画によくある演出、というのがあります。
殺人鬼などの怪人が出てきて逃げるシーンが代表的でしょう。そういったときに逃げている側が、途中で転ぶ瞬間を何度も見ている人もいると思います。
ほとんどが、途中で転んで、その間に殺人鬼などが距離を詰めてきて、殺される…というシーンにつながります。
ホラー映画では定番のお約束となっている部分なのですが、なぜ定番になっているのか?  というのはもちろんちゃんと理由があります。

それは途中で被害者側が転ばないと、逃げている側が逃げ切ってしまうという事情があるからです。
殺人鬼というのは、必死で被害者を追いかけません。不気味で、余裕をもって精神的にも追い詰めていきますので、こういった殺人鬼が全力で走って追いかけてくるシーンはまずありません。
悠々と歩いて追いかけてくる殺人鬼の姿そのものが、それが余計に恐怖を駆り立てるということがあると思います。

しかし、歩いてくるスピードに対して、逃げる側が走り続けると、確実に逃げ切ってしまうと思いませんか?
全く盛り上がらないどころか、それではコメディ映画です。
他にもよくあるお約束として、強い武器をもっている登場人物であれば、その武器が肝心なところで壊れる演出が起こったり、シャワー中(つまり全裸!)の無防備な時に殺人鬼が現れ、錯乱状態に陥ってしまうという演出もあるでしょう。

これらをリアルととるか、殺人鬼にとって都合のよい演出であると受け取るかで映画の大分印象が変わるのではないでしょうか。
いくら対処しても、殺人鬼にとって都合よくまわるホラー映画の世界。
しかし、それは映画を作っている側の事情の問題もあるということで知っておいてほしいです。

ホラー映画の作り手の事情も知っておくと、映画がより面白く感じられる場合もあるでしょう。自分が殺人鬼に追いかけまわされる悪夢をみる機会が減る、ということもあるかもしれません。